中小企業の経営者様へ中小企業の経営者様へ:就業規則・賃金規程等の整備が会社を守り、成長を加速させる理由

社会保険労務士の立場から、中小企業の皆様に就業規則や賃金規程、育児・介護休業規程などを整備することの「必要性」と「有効性」についてご説明いたします。

これらの規程は、単に法律で定められた義務だから作成するという形式的なものではありません。会社の秩序を維持し、従業員が安心して働ける環境を整え、万一の労使トラブルから会社と従業員双方を守るための、いわば「会社のルールブック」であり、「最強のリスク管理」の基本です。

1. 規程の必要性:めまぐるしい法改正への対応は、企業の責務です

労働関係の法律は、社会情勢の変化に合わせて毎年のように改正されています。特に近年は「働き方改革」や「女性活躍推進」、「育児・介護との両立支援」といった大きな流れの中で、企業に求められる対応が複雑化・高度化しています。

貴社では、古い就業規則やインターネットの雛形をそのまま使用していませんか?それらは現在の法律に適合していない可能性が非常に高く、以下のようなリスクを 内包しています。

  • 法律違反による罰則: 労働基準監督署による是正勧告や、悪質な場合には罰金が科される可能性があります
  • 規程の一部が無効に: 法律の基準を満たさない部分は無効となり、法律が直接適用されます。例えば、古い最低賃金を基準にした賃金規程は無効です
  • 従業員との信頼関係の損失: 法改正に対応していないことが従業員に知られた場合、法律を守らない会社という不信感につながり、優秀な人材の離職を招く一因となります

【近年の主要な法改正の例】

改正法企業に求められる対応(一部)
働き方改革関連法時間外労働の上限規制、年5日の年次有給休暇取得義務化、同一労働同一賃金の徹底
時間外労働の上限規制、年5日の年次有給休暇取得義務化、同一労働同一賃金の徹底「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設、育児休業の分割取得、個別周知・意向確認の義務化
パワハラ防止法パワーハラスメント防止措置の義務化(相談窓口の設置など)
2025年4月施行 改正 育児・介護休業法子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置(時短勤務、テレワークなど)の拡充義務

これらの法改正に一つでも対応できていない場合、貴社はすでに法律違反のリスクを抱えていることになります。当法人は、常に最新の法改正情報を収集・分析し、貴社の規程が法的に万全な状態であることを維持します。

2. 規程の有効性:労使トラブルを未然に防ぐ「予防法務」

従業員とのトラブルは、一度発生すると時間的にも金銭的にも、そして精神的にも大きな負担を会社に強いることになります。規程を整備する最大の有効性は、これらのトラブルの火種を未然に摘み取ることにあります。

明確なルールがない状態では、「言った・言わない」「そんなはずではなかった」といった感情的な対立に発展しがちです。規程は、採用から退職までのあらゆる場面における会社と従業員の間の客観的なルールブックとして機能します。

【ケース別:規程がトラブルを防ぐ具体例】

トラブル例規程があればどう防げるか?
【ケース1】
勤務態度の悪い社員にどう対応すれば
就業規則に服務規律や懲戒事由・種類・手続きを明確に定めておくことで、注意・指導から懲戒処分まで、一貫性のある正当な手続きを踏んで対応できます。不当解雇のリスクを大幅に軽減します。
【ケース2】
残業代の未払い請求をされた
賃金規程で時間外・休日・深夜労働の定義、割増賃金率、計算方法を明記。固定残業代制度を導入している場合は、その内訳(時間と金額)を明確にすることで、残業代に関する認識のズレを防ぎ、紛争を予防します。
【ケース3】
従業員からハラスメントの相談があった
ハラスメントの禁止を明確に宣言し、具体的な禁止行為、相談窓口、対処方針を規程に定めることで、会社として断固たる措置をとる姿勢を示し、被害の深刻化と問題の潜在化を防ぎます。
【ケース4】
メンタル不調で休職したいと申し出が
休職の要件、期間、手続き、復職時の流れなどを定めておくことで、従業員も会社も安心して手続きを進めることができ、スムーズな職場復帰を支援します。
【ケース5】
男性社員から育児休業の申し出が
育児・介護休業規程を整備し、法に定められた権利や手続きを周知しておくことで、従業員はためらうことなく権利を行使でき、会社側も慌てず適切に対応できます。企業のイメージアップにも繋がります。

規程整備がもたらす副次的効果

  • 生産性の向上: ルールが明確になることで従業員は安心して業務に集中でき、組織全体の生産性が向上します
  • 採用力の強化: 働きやすい職場環境が整備されていることは、求職者にとって大きな魅力となり、採用活動で有利に働きます
  • 助成金の活用: 働き方改革や両立支援に関する助成金の多くは、就業規則に関連する制度が導入されていることが申請要件となっています

まとめ:規程整備は「コスト」ではなく、未来への「投資」です

就業規則をはじめとする各種規程の整備は、目先の業務に追われる経営者の皆様にとっては、後回しになりがちな課題かもしれません。しかし、その整備を怠ったがために、たった一つの労使トラブルで会社の存続が危うくなるケースも決して少なくありません。

当法人は、労務管理の専門家であると同時に、企業の「人」に関するパートナーです。法的な要件をクリアするだけでなく、貴社の企業文化や経営理念、事業の実態に即した、本当に「使える」規程をオーダーメイドで作成し、その後の運用までしっかりとサポートいたします。

会社の持続的な成長と、従業員の皆様が安心して長く働ける職場環境を実現するために、ぜひ一度、貴社の規程の点検・見直しをご検討ください。お気軽にご相談をお待ちしています。